鯉沼 龍雄氏プロフィール
慶應義塾大学環境情報学部卒。
株式会社リコー(RICOH)にて、法人営業として勤務。販売子会社へ出向の後、新規顧客開拓、営業推進・商談支援グループを経て、メーカー本社に戻り大手企業の法人主担当として全国の営業戦略立案・推進活動を行う。コーチ・エィ入社後は、組織変革型ソリューションの企画・営業として立ち上げに携わり、これまで多くのプロジェクトに参画している。現在は、コーチ・エィ(タイランド)の運営、アセアン地域での組織変革プロジェクトの企画・推進活動、現地法人トップの方へのエグゼクティブ・コーチングなどを担当している。
−コーチングとは、どのようなことをするお仕事なのですか?
コーチングとは、1対1で行う人材開発手法です。コーチ・エィでは、組織の経営者やリーダー層を対象に「社員一人ひとりのパフォーマンスを最大限に発揮するために、組織内にどのような対話を生み出せばいいのか」などのテーマでコーチングをしています。つまり、組織全体に影響を与えるリーダーが物理的に増えれば、社員一人ひとりの意識が変わり、風土に影響を与えます。最終的には業績にもインパクトを与えていくことを目指しています。
−コンサルティングとは違うのですか?
はい。手法としては、全然違います(笑)。
コンサルタントは一つの課題に対してソリューションを提示することが主な仕事ですが、コーチは、あくまでも「答えはクライアントの中にある」として、思考の整理をサポートすることが仕事です。
そのため、コーチはコーチ自身の意見や思い込みを捨てて、クライアントの話すことを客観的に捉えること、それと同時にクライアントと率直にコミュニケーションできることも大事です。
コーチの仕事は何百時間やっても正解のないものですね…(笑)。
−お話を聞いていると、コーチングの仕事ってすごく難しそうですね…。そういったコミュニケーションスキルはもともとおもちだったのですか?
いえ、大学生の時は人の話を聞くことが苦手で自分の意見を言いすぎて周りに怒られたこともありました(笑)
−それは意外ですね!どのような大学生活を送られていたのですか?
僕は慶應義塾大学の環境情報学部の出身で、テニスサークルに所属していました。
何気ないサークル活動の中でも、「このサークルをもっとよい場所にしたい」と新歓活動や合宿の計画などを頑張っていました。
例えば、僕が3年生の新歓。それまでサークルは男子ばかりだったのですが、「雰囲気を活気づけるためには女子も必要だ!」と思い、女子が入りやすくなるようにアピールをしました。その結果、人数がだんだん増えていって、今では倍くらいになったと聞いています。OBとしては、とても嬉しいことですね。
−大学卒業後はどのようなお仕事をなさっていたのですか?
大学卒業後は、RICOHという事務機器メーカーに勤めていました。
僕が勤めていた時には、事務機器は技術的にも成熟していて、メーカーごとのスペックの差が小さくなっていました。そのため、販売の現場で、社員一人ひとりが顧客のニーズをいかにくみ取れるかが大事になってきていると感じました。
ですから、マネジメントでも上司が部下に教える「ティーチング」だけではなく、個々の主体性を伸ばす「コーチング」の力が求められてくると思い、コーチ・エィに転職しました。現在も、週1回、私は電話でのコーチトレーニングを受けています。
同じことを質問するにしても、相手によって質問の仕方は大きく変わります。コーチは、その質問力を高めるために技術を磨き続けなければなりません。コーチングの技術として、基本的な質問の型はありますが、実際の言葉は臨機応変にクリエイトしていくことが大切です。
質問をクリエイトするということは、思考をどんどん広げていくということです。質問をクリエイトすることは人工知能にはできないと言われています。今「20年後に消える職業」というランキングが話題になっていますが、人間にしかできない、相手の思考の幅を広げ、行動の選択肢を増やしていくコーチという仕事に大きな可能性を感じています。
−ありがとうございます。それでは、今後の展望を教えてください。
まずタイ人スタッフによるコーチングをもっと推進していくことです。
今は日系企業にコーチングをすることがメインなのですが、日系企業にもタイ人のスタッフが8割~9割くらいいらっしゃいます。日本人の経営者はもちろん、タイ人リーダーにもコーチングサービスを提供することで、日系企業の現地化のサポートをしていきたいと考えています。
コーチ・エィでは、日本語、英語、中国語、タイ語で共通のコーチングを提供できるので、、欧米圏にも広めていきたいと思っています。
−外国人スタッフの育成に際して、どのようなことに注意していますか?
仕事上のコミュニケーションにおいては、気持ち的なハードルを持たずにチャレンジすることが大事ですね。
やはり話すことで信頼関係が高まるので、言語の違いを臆することなくどんどん話しかけていけば良好な関係性が築けると思います。
オフィス内であった時に「髪型変えた?」や「今日も頑張ってるね!」など、「ちゃんとあなたのこと見ているよ!」という気持ちを伝えてあげるのです。コーチングでは、相手の存在や行為を認める「アクノレッジメント」と言いますが、こういったちょっとした言葉で職場の雰囲気は大きく変わります。
リーダーとしていかに価値のある言葉をかけることができるか。そのためにはまず、部下に関心をもって接するように心がけています
−コーチングを学ぶことでコミュニケーションのスキル向上につながるのですね
そうですね。20代の皆さんでも実践できることもいくつかありますよ。例えば、コミュニケーションが上手な人を探して、上達に必要な要素を自分なりに分析するのです。コミュニケーションに正解はないですが、上手な人から学び、行動に移していくと、身についていくと思います。
−最後に大学生へのメッセージをお願いします!
自分についてよく知ることです。例えば、自分が楽しいと思える瞬間は何をしてどんな人といるときか…などです。色々な体験をして、その時の自分の感情や反応など、自分を観察するところから、生涯をかけて取り組みたいことが見えてくるように思います。
今、人と接することから逃げることは簡単な世の中になりました。無理に人と接しなくても、楽しめる方法も、生活していくこともできると思います。でも、私は人と接して影響し合う楽しさを感じてもらいたいなぁ、と思います。
ぜひ、大学生のうちに、色々な人と会いに行ってもらえたらと思います。
鯉沼さんありがとうございました!
−担当者コメント
インタビュー以外にも個人的な悩みの相談にのっていただいたり、コーチングに関して教えていただきました。人と接すること、その中で信頼関係を作っていくことの楽しさや醍醐味を実感できました。
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