福田綾香氏プロフィール
熊本県出身。熊本YMCA専門学校ホテル学科を卒業後、東京ミッドタウンにある一流ホテルに就職。
同ホテル内の日本料理屋での勤務や麻布十番のお店の立ち上げなど飲食関連に関わる経験を積み、その後経験を活かす為、渡馬。
Kawaii Capital Sdn. Bhd.では飲食店の立ち上げや経営を学ぶ。同時に独自で学生達へ講演をしたり、海外ラジオ出演を果たしたり個人活動も積極的に行っている。
−会社概要を教えてください。
Kawaii Capital Sdn. Bhdは「日本人オーナーと日本人現地マネージャーが手掛ける日本のもの」をコンセプトに日本料理屋の「倉田」、カレーヌードル屋の「岩田」焼鳥屋の「ふく田」などの10店舗をクアラルンプールに2014年から約二年間で店舗展開している会社です。 小回りのきく組織であり、スピードを重視した経営判断が特徴であります。様々な業態での出店を行うことにより、ローカルに好まれる味・サービスを幅広く蓄積することができるのも弊社の大きな特徴です。
—福田さんは学生時代にどのようなことに興味を持っていたのですか?
高校は商業系の高校に通っていました。事務などじっとしていることが得意ではなかったので、ずっとサービスやおもてなしなど人と関わった仕事をしたいとその頃から感じていました。生徒会活動や県の復興活動など活発に動くことや話をすることが大好きでそれをさらに極めようと思いホスピタリティの専門学校に行きました。そのころから都会に憧れて東京の一流ホテルでの就職を夢見て常に学生生活を送っていました。
—ホスピタリティを学ぼうと思ったきっかけは、なんだったのですか?
高校生の時に自分の将来について何になりたいか考えたとき、一冊の本に出会いました。その内容が、自分たちのおもてなしによってお客様に喜んで頂いているというホテルサービスの本でした。日本の文化、おもてなしについて知ること、人に喜んでいただけるサービスを提供すること、読むうちにサービスの奥深さや楽しみを知り私も自分の力でお客様を幸せにしたいと思い、ホスピタリティの専門学校に入りました。
−専門学校ではどのようなことを学ばれていたのですか?
ホスピタリティ全般に関することでサービス英語や、ホテル経営、ベットメイキングやサービスの仕方など勉強していました。もちろん勉強したからといってすぐに仕事が出来るようになるわけではないですが、ホテルの仕組みを知ることで、仕事というものを身近に感じることが出来ました。また学校とは別に当時アルバイトを3つ掛け持ちしてたりなどかなり充実した日々を過ごしていました。
−就職するまでの経緯を教えてください。
高校生の時、有名ホテルの本を読んで第一希望のホテルにどうしても入りたくて。
当時、熊本に住んでいましたが東京のその企業の面接に応募しました。そのまま無理やりインターンシップにも参加しました(笑)。当時そのホテルでは新卒は基本的には取らなかったのですが、断られてもめげない姿勢で、人事の方とずっと連絡を取り続けていました。連絡の内容は自分の就職活動を伝えたり、季節の挨拶をしたりなど細目に。そして、ある日急に学校を通して内定通知が来ました。私がずっとアピールしていることを知っていたのでクラスみんな泣いて喜んでくれましたね。それから東京へ上京しました。私からしたら東京はとても憧れの土地だったのですよね(笑)。この時に諦めずに夢に向かって出来ることをやれば必ず夢は叶うのだと実感しました。
入社してからは、一流のサービスや料理など、おもてなしの心を学ぶことが出来ました。そこで作法や日本食の良さを改めて知りました。着物も着られるようになり、美しい歩き方や接し方など、いろんなことを一から学ばせて頂きました。
その後、ホテルの時の繋がりで東京の麻布十番にある鉄板焼きのお店の立ち上げを一緒にさせて頂きました。経営や立ち上げなど以前からとても興味があり、サービスするだけでなく運営も携わりたいという気持ちで転職しました。そのとき初めて仕事に対して極めたいことを自分がどれだけこだわって極めることができるかがとても大事なのだと感じました。お店を作ることの大変さも同時に経験し知ることが出来ました。それが今の仕事であるマレーシアの事業にもつながっています。
−仕事で挫折した経験はありますか?
私自身が悩んでいた時期、知人のシェフの紹介で東京駅にある日本食のところへ行きました。新卒から3年目、一番悩んでいた時期でもありました。「本当にこの仕事が向いているのか」「もう少し違う仕事が私にはあるのではないか」と思いました。それからいくつか転職の応募をしてみても、なかなか決まらず。やはりどこかに受かればいいやという気持ちで応募しても、会社はそれに気づくものでことごとく断られていましたね。自分に芯がなくて本当にこれからどうしようと思ったとき、最初の会社の先輩方や前職の同僚が、「福田さんは絶対サービス業があっているのだからとにかくその方向へ進んでやっていけばいいんじゃない」「ふくちゃんはそのままのふくちゃんで好きなことすればいいんだよ」と言われ、ふっと肩の荷が下りたんです。人を幸せにしたという原点を思い出し、私にはおもてなしやサービスを提供していく仕事しかないんだなと確信した瞬間でした。
—仕入れやライセンスなど日本とマレーシアの違いはありますか?
とにかくプロセスが多く、日本と違って明確ではありません。これができる?できない?の答えが曖昧で申請をしたものの返答が遅かったりもします。一任するといつまでもお店が出来上がらないし作業が止まってしまうので、それをマネジメントすることが一番重要になってきます。マレーシアはなかなかハプニングが多いです。だから今日来るものが今日来なかったらどうするかを考えるようにしています。いかにして取引先やスタッフをコントロールして、目標の期間の内で完成できるかを常に意識しています。
—異なる国の人々、価値観の方に教育を施す上で日本との違いはどこですか?
マレーシアは多民族国家なのでまず自分の常識はここでは通じない、再度それを心がけることです。必ず教える時に、「ただこうです」と指示を出すのではなく、なぜこうしなければならないのかを教えるようにしています。日本人には当たり前でも、外国人はそれを知らないので、言い回しを変えて、指導するようにしています。自分の宗教や国の習慣を大事にするからこそ、相手の宗教や国の習慣を大事にできると思っています。ですがそのためには理由がとても必要になります。面白く理由をつければ記憶にも残るし、それが当たり前になる。できるかぎり押し付けるのではなく、接客をする本人が実際に肌で体験をして覚えてもらうこと、言うだけでは伝わらないので、共感してもらうことで覚えてもらうことを心がけて指導しています。
また、100%を求めすぎると、それを分かり合えないことがあると思います。もちろん日本人同士でも分かり合えないこともあるのに、他の国の人ならもっと分からないですよね。それを全て押し付けてしまうとダメですし、逆にいつも愚痴を言っているような人とは仕事をしたくないと思われたくないと思います。いかに自分のスタッフがお客様を楽しませることができるか、そのためには自分はどうすれば良いか、二つの面から考えるようにしています。
—マレーシアで受け入れられやすい食べ物はなんですか?
マレーシア人は甘いもの、揚げ物が大好きですよね。マレー料理自体も揚げ物や甘いものが多いですし。一方、まだまだ生ものに対する抵抗が大きいので、繊細な味をこれからどうやって伝えていくかが課題になってくると思います。
—日本食の手応えは感じていますか?
3年前から日本食がとても増えていると思います。専門店はマレーシアには今までラーメン店だけでしたが、やきとり屋などの専門店も増えどんどんマーケットが拡大しているように思えます。徐々にシンガポールなど先進国に近い場所でも展開していきたいですね。
−やはり日本のサービスはハイクオリティーなのでしょうか?
そう思います。気づけるところと、気づけないところがあると思いますが、日本人は細かい気配りをすることが出来ます。そして、それは自分にとってのためでなく、お客様にとって快適であり居心地がいいと感じてもらえる日本人ならではのサービスだと思います。例えば、日本人は右利きが多いですが、左利きの人にはその人に合わせて醤油の置き方や橋の向きをさりげなく変えたりします。大きな感動はなくても心地よさを感じまた来て頂けるそんなサービスを日本人は提供することができます。
—今後の会社の展望を教えてください。
現在マレーシアで10店舗、その土地にあったいろいろなコンセプトで出店しているので、今後は、そこから派生したものを展開していきたいです。アジアをもっと攻めていこうと思っています。シンガポールやミャンマーなどを今から伸びていくところで一緒に成長、ともに国を作っていきたいですね。その時に、環境は変わってもいかに味とサービスを変えないか、そこに変化が生じると全く違うお店になってしまうのでそこは絶対に妥協しないようにしたいです。
—人生を選択していくにあたり、大事にしている価値観は何ですか?
最初はすごくアバウトでいいと思います。でも私は自分の性格上、やりたいことはすぐやることと直感をとても大切にしていました。自分の心にしたがってやっていく、それがどれくらい大変かは知らなくて後で大変なこともありますが、結局好きなことをしている自分が一番イキイキとしていました。あとは好きなものが見つかったら、軸をぶらさないことが大切ですね。軸がしっかりしていないとブレますから。とにかく素直に自分のしたいことをやってみることが大事です。
—大学生は今何をしておくべきでしょうか?
私から言えるのは、勉強も大切だけどとにかく何かのコミュニティーに入ってみることですね。アルバイトでもサークルでもいいし、何か一個グループに入ってその人たちと何かをしてみる、コミュニケーションを深く取ってみることです。海外に出るのも良いし、コミュニティーの中で沢山の刺激を得られると思います。それを素直に受け止めていろんなことに挑戦してみて、何かに特化してみることが大事なのかなと。いろんなことをとにかく楽しむことが大切です。
―福田さんにとって仕事とは何ですか?
私にとって仕事は夢です。
自分のやりたい仕事につくことが夢であり仕事を楽しむために常に夢を持って行動することで成功を掴むことが出来ると信じてやってきました。現状維持では前に進むことが出来ないので日頃から高い目標を掲げ、次々と達成し突き進んでいくことが大事だと思っています。夢を掴んだら次の夢(目標)に向かって常に走っていきたいです。
これから社会人になる人達にも仕事をする楽しさと夢を持って、頑張って欲しいと思います。
取材担当コメント
今世界から注目されている日本のサービス業。マレーシアに来て、福田さんのお話を聞き、サービス業の魅力に触れることができたのはとてもいい経験でした。
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