−プロフィール紹介
1980年代半ばに初めてインドへ。その後1990年代にバナーラスへ留学。2014年3月よりトマト・プロジェクトを運営。
−事業内容紹介
事業のメインはオーガニック、無農薬、ごく低農薬の野菜や果物の供給/販売です。そのほかに蜂蜜やモリンガなど、オーガニックや無農薬原料の加工品も取り扱っており、今後はこちらにも力を入れていきます。また、アーユルヴェーダも当社の柱のひとつです。設立当初から、食材のみならず生活全体をカバーする安心安全なもの・サービスを供給できる体制づくりを目標としてきたので、それに向けて一歩一歩進んでいます。
−なぜ有機野菜の販売を始められたのですか
インドに来た当初、安心して子どもに食べさせられる野菜がないことに悩んでいました。それは周りの友人たちも同じで、安全で安心できる野菜を入手できたらどんなにいいだろうと考えていたのです。そんな時、たまたま同席した日本人男性が農業指導を行なっている方で、「指導に入っている地域で無農薬のいい野菜ができているのに、売り先が見つからなくて困っている」というお話を伺い、びっくり。そこからトマト・プロジェクトは生まれました。
−インドの野菜と聞くとすごく安いイメージがあるのですが、比較的高いものを売るのは難しくないですか?
価格を最優先する考えはどこの社会にもありますが、それよりも自分や家族の健康、社会の未来、地球のこれからをも加味して考えられる層が、私が暮らすデリーNCRでも確実に増えてきています。私が留学していたころには「オーガニック」という単語すらなかったことを考えると大きな変化ですし、いい意味の変化のスピードも加速している感があります。まだまだ、オーガニック志向は全体化していませんが、オーガニックが当たり前の世の中になるお手伝いの一端が担えればうれしい限りです。
−今後の展望を教えてください
先の答えと被りますが、安心安全をコンセプトに生活全般をカバーできる商品やサービスを整えられるようにするのが大目標です。すでに肉類や魚、ハーブティー、サプリやスーパーフード、化粧雑貨の取り扱いを始めています。
また、ヒマーチャルやウッタラーカンドといった、環境汚染から守られているインド北部の山岳地帯との連携をさらに強め、本当の意味で安全な農作物やその他の産物をもっと皆様に知って頂き、ご利用頂けようにするのも目標のひとつです。女性の自立をサポートするNGOの生産物なども積極的に入れていく予定です。
インドはこれから世界を牽引していく大国です。だからこそ、次代へバトンタッチしていける環境作りとその問題にもっと目を向けてほしい。デリーNCRの中でさえトマト・プロジェクトは小さな小さな組織ですが、オーガニックを切り口にした情報発信を続けていくことで、社会の在り方を変えていく種を播けたらと思います。
−インドで働かれて感じる魅力を教えてください
毎日が新しいことでしょうか。留学生時代は毎朝「今日はどんな日になるのだろう」というワクワクした気持ちで目覚めましたが、今も時に疲れながらも、ついついワクワクしてしまいます。人との出会い、作物との出会い、それらが予期せぬところからやってくる面白さは何とも言えません。
また、インドという異国の地で食生活に苦労されている日本の方々のお役に立てること、お子さんの健康生活に少しでも寄与できることも、大きな魅力です。感謝されることは大きな励みになりますし、もっといい食環境を提供したいというモチベーションにもつながっています。
−これから、ドローンなど最新のテクノロジーが普及することでもっと集荷・宅配が楽になるかと思いますが、どう思われますか?
今のところ活用してみたいという思いはありません。インドという異国の地にあって、お客様に一番安心して頂けるのは個人間の信頼関係に基づいたやり取りです。そのためにはお客様とも直接、顔と顔を合わせるお届け方法がいいと考えます。また、生産者についても、トマト・プロジェクトは小規模農家との顔の見える取引を大切にしています。そんなこだわりに一番マッチした方法を、これからも重んじていきます。
−働かれてやりがいを感じる瞬間はいつですか?
これぞと思う農家や作物に巡り会えた時、予期せぬ出会いが与えられた瞬間、あとは農家さんでもお客様でも、人とのコミュニケーションの中でアイディアが降ってきたり、ヒントが与えられたときです。また、お客様に喜んで頂けた時もことさらやりがいを感じます。
それらに加えてスタッフがひとつの共同体として育ってきているのを感じる時にも、何とも言えぬ醍醐味がありますね。まだまだ課題も多いのですが。
−もし今、大学生に戻れるなら何をしますか。
体力づくりでしょうか。自分がやりたいと思ったことは実現していた学生時代だったので、戻って何をしたいというのはない気がします。
−インドのカースト制度についてはどう思われますか。
留学生時代に暮らしていた大家さん宅はカースト最上位の家族で、周りには比較的低いカーストの家族が暮らしていました。大家さんの奥さんは実に簡単に近隣の主婦たちを呼びつけては掃除をさせたり、豆を挽かせたり、ただで仕事をさせていて、当初は内心ひどいと感じたことが何度かありましたが、例えば手伝わせていた家族の誰かが病気になったり、ケガをしたりした時には、これまた当たり前のように大家さんの奥さんのところに相談に来て、薬をもらったりお医者さんに行かせてもらったりしていたのです。
また、ぐうたらな旦那が仕事をせずにいる家庭には、ちょっとした屋台が出せる資金援助をしたりで、ある意味、持ちつ持たれつの部分もありました。上位カースト者は知恵を与え、いざというときの資金援助をし、下位の人は自分にできる労働を提供していたのですね。冬になれば、屋上に集まってカーストに関係なくいっしょに陽だまりで編み物をする姿もあって、1990年代前半はカースト制度のいい部分がまだ機能していた最後の時代だったように思います。
ものすごい勢いで変化しているインドですが、カースト制度はいろいろな部分で今も残っていますし、これからも残り続けるでしょうね。いい悪いに関係なく。
−将来を不安視する大学生にアドバイスをお願いします。
大学生に限らず、現代に生きる人は皆、将来が不安なのではないでしょうか。それを超える絶対的な解はないと思いますが、まずは自分のやりたいこと、興味あることをとことんやってみるのがいいと思います。自分にとっては、その一つがインドでした。
あとは人と出会うこと。出会いからは様々な「熱」が生まれますから。自分の中にこもらないでいろいろな人や出来事に出会ってみて下さい。
取材担当コメント
ヒンディーを話せるということもあって、土屋さんは今まで取材させて頂いた方の中でも特にインドについて深く理解されているんだな、また何よりもインドのことが好きなんだなと感じました。一人の起業家としてだけでなく、一人の人としても尊敬しています。
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