ミャンマー有数の観光名所のバガン遺跡で「不謹慎」な観光客が多いことを理由に、2016年3月1日より仏塔に登ることが禁止することが発表されました。
ミャンマーのバガンってどんなところ?
バガンはミャンマーのほぼ中央部に位置し、主要都市ヤンゴンより北へバスで10時間、寝台列車で20時間ほどのところにあります。また、ミャンマー中部の玄関口であるマンダレーからバガンまでは4.5時間ほどです。
今からおよそ1000年前に栄えたミャンマー初の統一王朝バガン。その都のあった場所には3000を超えるとも言われる大小様々な仏教遺跡が林立しています。その多くは、西暦1000年代から1200年代に建てられたもので、カンボジアのアンコール・ワット、インドネシアのボロブドゥールとともに、世界三大仏教遺跡のひとつとなっています。
観光地として有名なこともあり、毎日数百人の観光客や巡礼者がパゴダ(仏塔)に登り、朝日や夕日を見物することがバガンにおける観光のハイライトとなっていました。
それでは一体なぜ、仏塔に登ることが禁止となってしまったのでしょうか?今回は実際に2016年10月17日-19日にバガンを訪れた筆者が実際の写真とともに見ていくことにします。
ミャンマーのバガン遺跡に行ってきた
観光客のマナーが原因?
ミャンマー文化省は2月22日Facebook上で公表した情報によると「警告したにもかかわらずパゴダに登る人々なかに不適切な服装や、パゴダの上で踊ったり寝たりするなど、文化的に恥ずべき行動があった」とし、「3月1日以降、いかなる理由であろうとも仏塔に登ることを許可しないことを発表します」と結んでいます。
ミャンマーの仏教施設(パゴダ・寺院)では、多くの決まりがあります。
・寺院では大声で騒がない
・靴や靴下やストッキングなどは脱ぎ、裸足で参拝すること
・キャミソール・タンクトップなど露出の多い格好の禁止
・男女問わずショートパンツのような(長ズボンが好ましい)
ミャンマー国内でも特に聖地として有名なヤンゴンのシュエダゴンパゴダやチャイティーヨーパゴダ(ゴールデンロック)では上記のような不適切な格好だと入場を拒否されます。
しかし、バガン遺跡の場合は大変広大で強い日差しがあることや「遺跡」ということもあり、服装に関してそれほどうるさくないのが現状でした。
筆者は昨年2015年10月にバガンを訪れていますが、多くの西洋人観光客がタンクトップで注意されている様子はありませんでした。
裸足になるという点に関してはサンダルのまま寺院の敷地内やパゴダに入ってしまう観光客が散見されました。これは西洋に外で靴を脱ぐ習慣がないことだけでなく、案内表示が主だった寺院にしかないことや、どこからが靴を脱がなくてはならないのかの案内が不足しているようにも感じました。
タイル張りであれば靴を脱ぐべきだとわかりやすいですが、中には打ちっぱなしのコンクリートや泥だらけの参道も寺の敷地とみなすべきかが観光客にとってとても曖昧である部分もありました。
中にはコウモリの巣と化したパゴダも存在しており、コウモリの糞を避けるようにして歩くのにだいぶ抵抗があったことが思い出されます。
パゴダで浮かれて踊ったり、寝るなどの行為はもっての他であることはいうまでもありませんが、カンボジアのアンコールワットでは、米国人の姉妹がヌード撮影をしたことで拘束の上国外退去命令が出る事件、フランス人男性3人が同じく裸になったことで逮捕されるなどの事件も起きています。
観光業への影響は?
観光省の統計によると、昨年は50万人近い外国人観光客がヤンゴン経由でバガンを訪問。その観光客数は2011年の2倍以上とも言われています。
Myanmar Tourism Marketing industry groupの代表ピョエ・ワイ・ヤー・ザー氏は「観光は我々の文化的遺産を発信する術であり、このバガン遺跡における仏塔登りが禁止になったことは観光業界に影響をもたらすだろう」とAFP通信にコメントしています。(The Telegraph)
今後、仏塔以外で高所から展望する方法としては観光用のバガン・ビューイング・タワーや熱気球などになります。熱気球は300ドル以上と高価です。
また、ビューイングタワーは軍事政権時代に作られた高さ61mの展望台で、以前バガンをユネスコ世界遺産登録を進めようとした際に景観上の理由で却下された原因の一つでもあります(その他却下理由は近代的建材用いてのパゴダ修復、近隣のゴルフ場など)。
このようにバガンは多くのジレンマが重なっており、ミャンマーの現実の一面を垣間見る場所なのかもしれません。
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遺跡・観光地を守ることと観光客のマナー問題は、観光国の抱える課題でもあります。
急速な民主化により観光客数も増え続けているミャンマーですが、こういった制限を生まないためにも訪問する際は最低限マナーを学んでおく姿勢が必要ですね。
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